「千葉さんは寝ていません」

先日、私の12月退職のニュースを聞いて、退職された常務や部長さんたちがささやかに会を開いてくださいました。
本当に心温まる時間を過ごさせていただいて、感謝の気持ちでいっぱいです。


今の会社に就職したのはかれこれ10年近く前になります。
当時の私は、離婚、子供達との別れ、営業職での挫折など、人生のどん底状態でした。
夢や希望もなく、「もう働くなんてどこでもいい」の投げやり状態・・・・。
ふっと「人がいなくて困っているらしい」と紹介されたのが今の派遣会社でした。
実際に行くまで、どんな会社で何をやっているのか全く知りませんでした(笑)
そのくらい「どうでもいい」ことだったのでしょう・・・・。
パソコンもろくにできなかったのですが、人がいなくて急いでいるらしく、急遽採用が決まってしまったのです。


普通に働いた経験が少なかったこともあって、最初は戸惑うばかり。
まわりの皆さんのお陰で何とか慣れることはできましたが、どうせ派遣だし、という意識もあり、仕事も決して熱心ではありませんでした。
元々黙って座って仕事をする向きではなかったのと、やる気のなさで、手が空いたときにはうとうと眠りの世界に入ることもしばしば。


それがある会議の席で問題となったらしいです。
その時、先日来て下さった常務がひとこと、みんなの前で「千葉さんは寝ていません!!」と言い放ったというのです。
これは何年も経ってから人づてにお聞きしたので、ご本人に真偽のほどは確認していません。
私なりにその言葉の意味を真に理解するまでに時間がかかりました。
まわりもあまりに唐突な発言にびっくりしたそうですが、その勢いに引いてしまい、話は終わってしまったそうです。


そんなこととはつゆ知らずにのほほんと過ごしていた私、とうとうダメ人間の自分でもさすがに「こんな状態ではいけない」と自覚し、営業部のポストが空いたので、部署異動の願いを出してみました。
派遣の身分でそれは前例のないこと。
答えは「NO」でした。
私が退職を決意した次の日、例の常務から応接室に呼ばれました。
「私がすべて手筈を整えました!3月から営業に異動して下さい!」とのことでした。
私が謙虚に心を入れ替えて仕事をしようと思ったのはその時です。


それからは快く受け入れて下さった部長と共に二人三脚の日々が始まりました。
その方も決して表には出しませんが、どんな時でも私を尊重し庇って下さいました。
自分の手柄は部下の手柄、という方なので、今でも「チバのお陰だ!」とおっしゃってくださいます。


今回つくづく、ゴミのように使い捨てしようと思えばできる派遣社員を心ある上司の方が大切にして下さったお陰で私はこれまでやってこられたのだ、と思いました。
逆に今は、そのような方たちがいなくなってしまい、杓子定規に物事を決めてしまう風潮が気になります。


人はコストではない。使えば生きる資源です。
ゴミから少しは私が進歩したように!
そして私も「人を尊重し、大切にしていこう」と心の底から思えます。
人は大事にされれば自分も人を大事にしよう、と思うものなのです。